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2007年01月14日

●犠牲祭3:変わりゆく村人生活

さて、犠牲祭といえば、親戚や近所の人々に挨拶して回るという大仕事のある日でもあります。
この日のために、わざわざヨーロッパ出稼ぎ組も帰ってくる人もいるくらいですから、田舎の町は大にぎわい。
どこの家でもまずお茶が出てお茶菓子が出て、そして羊を食べる事に誘われて、ひたすらおしゃべり(会えなかった日々の日常報告?)をして、また次の家庭に移って行く…という具合なわけなので、言葉もよくわからない上に、話題になっている事が自分たちが話題にすることと大抵大きく違っていたりする外国生活において、コレはかなりストレス度の高いイベントだったりして。(結婚式も同様(苦笑))

幸い我が家の場合はうちのダンナが子供の頃から働きに出ていたり、そもそも遊牧民生活だったこともあり、あまりそうした伝統にこだわりがないので、私のようなガイジンの嫁には大いなる救いなのでありました(ホッ)

もっとも、幸いにして?親戚やらお友達まわりをしたがらないダンナも、もちろん日々の生活の中で親戚やら友達まわりをしているお母さんからは、いろいろと報告を受ける事になり、ここから村人生活の中での関心事や、変化を感じ取る事ができるわけなのです。

私にとっていつもおかしくてしょうがないのは、彼女にとって一番の関心事が「牛」な事。
電話で話しをする時にも、まず牛の心配。
出かけた事のない町に出かけると、どこかに放牧に都合の良いような草地がないかどうかは絶対チェック。
そしてもちろん、家族が訪ねて行っても、まず牛についての話題が!(笑)
おかげさまさまで、私の数すくないベルベル語単語のうちでも、「タフナスト」(牛)は、忘れ得ぬ単語です(笑)

最近では実家からそう遠くない町に住んでいる弟夫婦の家の2歳になるおばあちゃん大好き子(女の子)まで、車に乗りながら、歩きながら、家の中をうろうろしながら、「タフナースト!!」と騒いでいるのが、私の笑いのツボをさらに刺激するのでした。
彼女はこの他にも「鶏(タフルースト)」「アリユール(ロバ)」など、動物の単語がいっぱい。
けれどももっとも身近な「羊」については「バァ〜」と、鳴き声なところがおかしいのでした。

さて、話題を元に戻してお義母さん。
この冬の報告事項としては、「タフナストが寒がっている」というのがポイントだった様子。
先月の大雪では1メートル以上も雪が積もったらしいのですが、「寒がっている」のは人間ではなくてあくまでも「牛」なところが、えらい!すごい!
私だったら絶対「寒いからストーブ持って来てくれ」(ついでにその電気代も!)とか息子におねだりしそうですが、彼女的にはあくまでも「牛が寒がっている」ところが重要なのですから、すっかり尊敬してしまうのでした。

ところがそんな感動の嵐に震えていたのもつかの間。
実はこの地域の人々は、「アロ」と呼ばれるヤギ(あるいは牛)のミルクで作ったヨーグルト状の飲み物が大好物なのですが、これはヤギの形そのままの革の袋の中にヤギミルクを入れ、木の支えの下につるして、ひたすら手でバシャバシャと油分がバターとして分離するまで揺らし続け、バターがなくなったところで出来上がった飲み物の事。
我々ガイジンにはこの飲み物はちょっと強すぎるのですが、この作業工程というのはどんな人にもおそらく非常に興味深いもの。旅人がやってくると、必ず参加したくなる作業の一つであったりします。

ところがなんと、ようやく電気が入って1年ほどになるこの村では、これをミキサーか何かで作り始める人が出て来たようなのです。
確かにこのヤギ革の袋をゆらし続ける作業というのは、5分も続ければ慣れないガイジンなんてもうヘロヘロになってしまうキツーい作業。それを日常作業としてしなくてはならなかった主婦としては、それを代行してくれる機械があるものならぜひ手に入れたいとは思うでしょう。

けれども、ヤギ革の袋には、きっと何度も何度も使われる事で暮らし始める、「アロ」をおいしくする菌がたくさん暮らしているでしょうけれども、プラスチックの箱にはそれはなし。
そして、土鍋で作った煮物がおいしい、と言われるような味わいの深さが金属の鍋にないのと同様のことが、ここでもきっと起こるでしょう。

畑仕事に食事作り。
家畜の乳搾りとそれの始末。
早朝からはじめても夜遅くまで働く事になってしまうこれらの作業を楽にできるマシーンがあるのだとしたら、きっとだれだって欲しくなるのは本当によくわかる事ながら、電気の存在が少しずつ、生活をどう変えて行くのか、という事を眼前にするのは、やはりなんだか寂しい事です。

実家の横は、これまたいまいましい(フトドキものの管理人的に)舗装道路が、そう遠くない将来に通る事になっています。
こうした変化は、今後平和な小さな村の中にどんな変化を生んで行く事になるんでしょう。
個人的に失いたくないと思う小さな生活文化が消えてしまう前に、ぜひとも自分の身につけておきたいと思いつつ、今の所その時間を作る事ができていない自分の生活が、少し腹立たしくもあるのでした。

帰り際にお義母さん。
私の手をとって「次に来る時にはミルクかきまぜマシーン持って来てね」と、ジェスチャー。
すかさずダンナに「いや。タフナスト用の暖房を設置できるようにすると言ってくれ。アロ作りは、電話してくれれば私が行くわっ、って言って」とメッセージ。
返ってきたお言葉は、ありがたいことに
「あなたが正しいわ!」

管理人、次の冬までに「ソーラーパネルでタフナスト用の暖房を設置する計画」がんばります(笑)
(ちなみに私からお義母様へのイードのプレゼントは、タフナスト用毛布、でした!もっとも、新品なので、おそらくそんな事には使っていないと思うのですが(笑))

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