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2007年01月13日

●犠牲祭2:同じ「羊肉」でも違う味!

さて、山奥の実家には、ダンナとその弟たちが集合。
既に前日に1頭の羊が捌かれており、さらに当日に2頭。
それだけのお肉は、いったいどこに消えていくんでしょうか。ガイジンな私は1日肉づけになっただけで「勘弁してください!」なんですが、モロッコ人の若い女の子に聞いてみると「…そう?私はぜんぜんかまわないけど?好きだから。」とのこと。
毎年毎年同じ事をやって、食べ過ぎて嫌いになったりとかならないんだろうかと不思議です。

さて、例年羊を捌くところから見たがるうちの子は、幸い外に降り積もっていた雪と戯れに出かけていたので、一安心。さすがにいくら見たいと言われても、まだそればかりは少し早いような気がしてしまうのですよね。
大人の私でさえ、何回見ても、首を切られてもなかなか息絶える事のない大型動物の姿を見るというのはなかなかつらいものです。(でも、死んでいただくわけなので、せめて見て、かつ食べるる事でお見送りしてしまう私です)

死に至るステップというのはどの個体もほぼ同じなのですが、かなり長い事もがく個体もいれば、横になった時に既に観念している個体もあったり。羊にしてもそれぞれの生き様と思想?があるのであろうかと、生き物がやがて肉へとなっていく過程を見つめながら、毎年いろいろ考えてしまいます。

しかし、そのようにしてしばし哲学者になったのもつかの間。
すっかりただの「肉のかたまり」になってしまうと、人間とはなんと欲深い生き物であることか!
関心はすっかりそれを「味わう」事の方(苦笑)
今年はネットで知り合った北海道の方にわざわざ送っていただいた「べるのたれ」(←田舎でも大好評でした!)持参で出かけましたからね。
肉を食べる事にかける意気込みも例年以上です(笑)

けれどもその気合い十分の「欲」を前にしてもなお、我々日本人・パッケージ社会の申し子は、また一つ自然の不思議と出会う事になるのであります。

実は不思議な事に、こうして「肉」になった羊たちは、個体によって、その味わいに大きな違いがあるのです。
牛なら牛、鶏なら鶏、羊なら羊、、、と、パックに入れられている肉を味わっていた日本の生活では全く気がつかなかった事ですが、なんと肉というのは、個体によって全然味の違うものなのです!

例えばレバー。なんだかぱさぱさして味わいのないレバーがあるかと思えば、しっとりと濃厚な味わいのするものも。肉で言えば、なんだか油臭い、いわゆる「羊くささ」のある肉があるかと思えば、一体これは何の肉?というくらい、何の臭みもなく、かつ味わい深い肉があったりと、羊によって大きく当たり外れが!

実はこの疑問、ウルルンのロケのときに、ノマドの息子さんに聞いてみたのでした。
「いやぁ、羊だけどさ。おいしいのとおいしくないのとあるけれど、どうしてなんだろうねぇ」と。
すると帰ってきた答えは
「そんなの当たり前じゃないか!ほら見てごごらん、あそこに生えているあの草はとてもいい香りのする草。こっちのは普通の草。でも、羊によって毒があるって言われる草が好きなのもいるし、そうでないのが好きなのもいるからね。羊にだって好みってもんがあるから、食べる草の種類が違うんだよ。食べるものの種類が違えば、肉の味だって違ってくるさ」とのお言葉。

なーるほど納得。そりゃそうですよね。
さすが毎日羊の後ろ姿を追いかけてきていた人々。見つめているのは、やはり後ろ姿だけではないのだわよね、と、すっかり感心してしまいました。
そういわれてみれば、日本の牛や鶏というのは、全体に同じエサが与えられ、同じ面積のケージの中に押し込められ、目の前にやってくる、ほぼ同じ量のエサを食べて大きくなって行くわけですから、同じような味わいに育って当たり前。(それでもきっと、性格の違い等で味わいに違いがあるのでしょうけれど!)
牛肉、鶏肉…といった区分けでしか、肉を味わいとしてとらえられなかったわけです。

それにしてもモロッコLife。
ただ肉を焼いて食べる、というだけの事の中に、なんと違いのある事よ!
子供にも、そんな違いがある豊かさの中で育ってほしいと思ってやってきたものの、実はそうした事に気がつく事ができるのも、自分自身が画一的な日本のパッケージ社会の中で育って来た履歴があるからこそ。

私にとって良いものも、うちの子供にとっては、もしかしてあまり意味がないかもしれないというのは、どことなく、「羊にだって好みってものがある」状況と似ているかもしれませんねぇ。

さて、羊飼いよ。
この草を食べておいしい肉になれよ、と、おいしい草を目の前に差し出すのか。
それとも、好きなものを食べて大きくなれよ、と後を追うのか。
答えはいずこに?!

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コメント

では、yama-sanのご実家では当然どなたかご家族の方が捌く訳ですよね。私が去年カサで体験した時は、お肉やさんに頼んでおいて順に来てもらう仕組みになっていたみたいでした。いくら手際がよくても、一度見たらもうできれば二度はいいかなという感じでした。
ふだん牛肉や豚肉を食べていても、パックになったお肉しか目にしていないので驚きでした。さて今年は犠牲祭も終わった1月4日からチュニジアへ行ってきましたが、モロッコと似ているようでいろいろと違う処もあり、面白かったです。以前猫のことで投稿した猫好きの私ですが、覚えていますか?チュニジアもたくさん猫がいて写真もたくさん撮りました。モロッコと比べると、例えばスークの中では、椅子の上に座ってまるで店番をしている様な猫がいたり、チュニスのシェラトンではドアの横にいて、ドアボーイなの?と思わず聞いてしまった猫とか、チュニジアの方がなんとなく人なつこい様な気がしました。
モロッコの猫たちの方が人間と同様たくましいですね。

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