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2006年08月11日

●庭のある生活

なんでもない青空

もう少し広い家がいいのではないかと家探しをしていた去年の春。
広いと言っても、モロッコの、それはもう結婚式の時くらいにしか活用できないんではないかというくらい広いサロンがいくつかあるような家ばかり見ていた時、近所のイタリア人の紹介で出会った不動産屋さんが紹介してくれた家が今の家。
荒れ放題だったながら、庭付きだった今の家を見たその日に、「この家にしよう!」と思ってすぐに決め、以来そろそろ1年3ヶ月。
その日以来、人生30ン年で、初めて「庭付きのおうち」生活をenjoy中。

入居当初、まず私がはじめたのが庭の手入れ。
延び放題だった雑草をまず全部抜き、大きな石ころを袋に詰めて捨て、堆肥を買って来て土に混ぜる。
モロッコ人に言わせると、そんなことは1日50DHとか70DHで雇える庭師の人にやらせればいいのに、という事になるのだけれども、そんなオイシイ所を他人にやってもらうなんて大間違い!

まず私が最初に選んだ作業は、土を起こして、そこに芝生を植える事。
いつかマイホームを手に入れた時に、どう植えて、どう育てたらきれいな芝になるのかマスターするためにもぜひやりたかった作業だから、花を植えるよりも何よりも、まず一番最初にトライしてみたかった事でした。

まず近所で、芝生が詰まった小麦袋を近所の植木屋にオーダー。
ヒゲのように長くつながった芝をはさみでちょきちょきと切って、茎と、根のある部分を分ける作業をした後、3本くらいの芝生の苗を束にして、掘り返した土の中にしっかり埋めるという作業をひたーすら繰りかえすのが、まっさらな土地にはじめて芝生を植えるという作業の全て。
まるで田植えのようなこの作業、やりはじめるとハマってしまって、「全部植えたぞ!」という達成感目指してひたすらもくもくと働いてしまった私でした。

そんな地味な作業が実って今年の夏。
庭はみごとに緑の芝で埋まり、今日ようやく「そうだ…このところの疲労感は、きっと緑に触っていないからだぞ?!」と思い立ち、ついに延び放題に延びていたこの芝生達をカットすることにしたのでした。

夕方、マルジャンでシザーハンズの主人公も真っ青な巨大な庭仕事用のハサミを購入し、いざカット!
いや、のびたヒゲを切るがごとくどんどん短く、平になっていく庭を見る事の気持ちのいいこと!
夕闇とともにマメだらけになったやわな手とともに作業を終えた後、芝生の上に絨毯をしいて、庭中に蝋燭をならべて家族でディナー。
誰も気にせず横になって、好きな料理を食べる。
自分で洗わなくちゃいけない、というところがレストランと違うけれども、久々にリラックスできた出来事でした。

自分で植えた芝を自分で刈り取るまでに成長させる事ができた事が、自分の気持ちを、ただのガーデンディナー以上のものにしているわけですが、寒い冬を越え、マラケシュの夏の暑さの中に生きる植物達を見ながらこの1年で私が一番学んだのは、何よりも雨の大切さ。

毎日毎日たかが芝生を育てるために、一生懸命ホースで水をやってきたわけですが、そんな努力もマラケシュの太陽の下では、それこそ砂漠に水をかけているようなもの。1日の終わりには、カラカラになった地面が顔をのぞかせているわけです。
そうさせないためには、それこそ月末の水道料金が気になるくらい、水道を全開にして、かつそれは長い事水を出しっぱなしにしていないとうるおいません。
ところがそれが雨だと、ほんの10分しっかり降るだけで、翌日私が水まきをしなくても地面はうっすら黒ずんだままなのです。

人生30ン年。
日本の実家の前にはとても大きな公園もあり、子供の頃から自然やら土やらには親しんでいるというのに、植物を育てるというそれだけの事のために、なんとこれだけの水が必要とは気がつきませんでした。

蛇口をひねる手の感覚と、空から落ちて来る雨粒の数。
雨の持つ力の大きさを、小さな庭から、体に教えてもらったのがこの1年だったかもしれません。

たかが庭の芝生くらいで水の持つ力を思い知らされるくらいですから、広大な畑で作物を育てる人々は、一体どれだけその雨粒が自分の畑に舞い降りて来るのを待っている事でしょう。
南の人は、グレーの空から水滴が落ちて来るその日、「今日はいい天気だね!」とささやきます。
底抜けの青空の下で、路肩の植物さえ「うーん」と背伸びをしているように見える、雨の後の砂漠の道。

いやぁ、気持ちイイっ!
そんな日は、お客様もほったらかしで、つい口に出して感慨にひたってしまう私なのでした。

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